若潮マラソン(前日)
 出発からの多難っぷりは、そりゃあもう大変であった。
 いざ出陣っ!と、館山へ向かうべく土曜日、関東地方はまたもやの大雪となっ た。この冬三度目の雪で、その中でもいちばん降りがはげしい。景色の壮麗に見 惚れていたうちが幸せであったかと、後には笑い話になるのが常。

 「東京駅発14時30分、特急ビューさざなみ13号」の情報を頼りに、我が 刻色館からは、なり・ゆうじ・ひい・ひらいの4人が出発。みずきは前日に応援 チーム、ともみちゃんの家に泊まっており、東京駅での合流予定。おなじく応援 のみさこちゃんも東京駅で落ち合うこととなる。
 4人は刻色館を13時30分に憤激出発し、総武線に乗り込む。中野まで与太 話に花が咲き到着。さて中央線に乗り換えようかという時に、誰だかが突然言っ た。「ハガキは?!」 さあ大変、出場する為に必要な申し込みハガキに誰も気 付かなかったわけだ。
 大変だ大変だと急いで逆方向の電車に飛び乗った一行。電話で連絡し、駅まで ごりちゃんにハガキを持ってきてもらうことにする。到着寸後ゆうじがいつもは 見せない小鹿のフットワークで階段を駆け下りハガキを受け取りに。次に来る電 車は13時52分発。果たして14時30分の電車に乗れるだろうかと、皆の焦 り色濃くなる一方。降雪で電車も遅れかねない。何としてでも乗らなければ、次 は17時30分まで電車がない・・・。
 と、再び誰だかが突然言った。「ほ、保険証?!」 そう、ハガキに目をやる とこう書かれている。「参加者は必ず保険証持参」
・・・・・・しばし沈黙。状況の把握に脳をフル回転。
 と、皆の焦りムードが一気にあきらめムードに転換した。
「もう無理だね。」
「次にしよう。」
「家に帰ろうか。」
刻色館的いいかげんさがもろに露呈。誰もハガキにしっかり目を通しておらず、 更には忘れてしまう始末。苦笑いも雪の寒さにこわばる。

 家に着くとごりちゃんといたっちはおらず、ご飯でも食べに行ったのかなと予 想。みずきに電話をし、先に電車に乗っちゃっていいようちらはあとから後から 行くよ、てな話になる。その旨を伝える為ゆうじがみさこちゃんに電話したとこ ろ、「あれ15時30分発じゃあなかった? だって前はそれで館山に行ったじ ゃない?」と。
 どうなのだろう真偽を確かめるべく刻色館有する限りの情報ツールを駆使する 。結局ひらいがJR東京駅に電話をして確認が取れる。「ビューさざなみ13号 の出発は15時30分です。
」  先程のあきらめムードは一気に安心ムードに。
「良かった間に合うよー。」
「誰だよ14時30分発って言ったのは〜」
「まあよかったよかった。」
 他に何か忘れ物がないかと各自しっかり確認し、再出発。中野で中央線に乗り 換え東京に向かう。途中御茶ノ水でしばらく停車。
「まあ雪だから仕方ないな。」
「それにしてもドア開けっ放しで寒いよなぁー。」
 その「しばらく停車」が、後に我々をぐったりさせることとなるとは。

 15時過ぎに東京駅八重洲南口で皆合流。総勢7人勢ぞろいでいざ!京葉線ホ ームに向かう。みどりの窓口で自由席特急券の回数券を購入。多人数割引に皆得 した気分。と、ホームに下りてみると、予想してはいたもののかなりの行列。こ りゃあまずいとすぐさま指定席券に買い換え一安心。それぞれジュースやらビー ルやら菓子やらを買い込み、すっかり旅行気分で電車に乗り込む。電車は15分 ほど遅れて動き出した。

 地下を抜けてぱあぁっと明るく広がった窓外の風景は、果して夢心地であった 。
「すっげ〜えぇ〜」
「きれいだねー」
「こんなんもいいなぁー」
と、ビール片手に楽天リゾート気分。結局座席はバラバラであったが、それぞれ がそれぞれの日常から離れ、様々な思いを胸に、ひとつの車両を共にしている。
車中には出場者と察せられる人が多数おり、まさに「走る」ビューさざなみ13 号。何度も大会に出場し、日常的にも走ることを欠かさない上級ランナーも、刻 色館メンバーのようななんちゃってランナーも、じっとその時を待つ。
 それが予定通りであればもう少しよろしかったのだが。

 まず最初に木更津駅手前で停車した。
「停止信号の為しばらく停車します。」
放送を聞いた車中の雰囲気は微妙に変化。まあ仕方ないな的雰囲気が車中に流れ る。
 そして間もなく木更津駅到着。木更津の降雪具合もだいぶはげしい。高校時代 の3年間をこの街で過ごした経験があるが、これほどまでにこの街で雪が降り積 もるのを見たのは初めてだった。やはり、しばらく停車。停車中ちょうど向かい のホームには安房鴨川行きの鈍行電車が止まっているのが見えた。電車はドアを 開けっ放しにしたままずうぅーっと止まっていた。中にいる人たちはまったくと 言っていいほど動かなかった。頭の上に笠を乗せたくなるくらい、首をすくめて じっと寒さに耐えていた。

 結果から言えば、僕らが乗った電車は「鈍行ビューさざなみ号」であった。館 山までのほとんどの駅で停車し、車中のムードはすっかりイライラとしたもので あった。着いてしまえば「まあいいや」となるが、最中はため息のひとつもつい てしまうものだ。体調管理・スケジュール調整の万全を期する上級ランナーは、 僕らに比べさぞかしイライラしたものだろう。隣に座っていた上級者風のおじさ んは、「ハアァ〜〜」とか「チッ」とか「何だよ」とか、停車するたびに行き場 のない滞りを口にしていた。
 結局、定刻通りに行けば2時間弱で着くところを、3時間40分もかかってし まった。改札の周りには人だかりができ、駅員はなるべく乗客と目を合わせない ようにしていた。別にその人が悪いわけじゃあない。別に誰も悪くない。怒って も仕方ないし、JRだって「や〜めた」と、電車を走らせなくすることだってで きるのだ。でもまあ怒りをどこかしらにぶつけたくなる気持ちもわかるが。
 改札を抜けて、皆で明日の集合場所や時間を確認。そしてそして、みずきとと もみちゃんの努力の結晶、刻色館Tシャツの初お目見え。沢野ひとしも真っ青の ウマヘタ絵(いや、だいぶ似ている)で刻色館ランナーズの顔がプリントされた 、何とも素敵なTシャツである。5人の顔の中心には「刻」の文字、それぞれ色 違いで、袖には着る人の顔がプリントされている。何ともスバラシイ!!
 そんなふうにしてぐったり感も吹き飛び鼓舞を得た我々は、明日の疾走に不安 と期待で胸一杯。それぞれの家路に着いたのであった。


Copyright (C) 1999-2002 Kokushikan All Rights Reserved.
Last update : 2002/5/3 update by Hiee