あいにくワタシの居る場所は
ちいさな庭の片隅だから
あまり気にも留められません
でも、いいの
みなの気ばかり引いたって
息苦しくって窮屈なだけ

やさしいしとしと雨の時期
ワタシはこっそり花を咲かせる
それもなるたけ精いっぱい
おかげでほら
今年は格別きれいに咲いた
気にされてたら 恥ずかしくってこうはいかない

ワタシは貰われてきたんです
忘れてしまったけど どこか遠いところから
やさしい目をしたおばさんが
やさしい手つきでワタシを植えた
もう四半世紀も前の話
おばさんはどこか遠くへ行ってしまったけれど
ワタシは今もここにいる


蝶がひらひらやって来て
花に羽根休め あいさつ
ワタシはその蝶に 先祖の話を聞かせてあげる
あなたのおかあさんも そのまたおかあさんも
こうやって毎年ここに来て
自分が何処から来たのかを 知りたがっていたのよ

「昔のことなんて
 忘れちゃえばいいの
 今のあなただって
 明日のあなただって
 その時を過ぎてしまえば
 もう過去のあなたなのよ」

蜘蛛の巣に捕らわれることもなくなり
蝉の鳴き声もせず
蛙の姿も見えなくなった
でもあなたは飛び続けなさい 飛び続けなければいけないの
これは四半世紀も前から言っていたこと
あなたはどこか遠くへ行ってしまうでしょう
でも子供たちがきっとここに来る


いつものように梅雨空は
別れのコトバもなく北へ
いつもそうなの梅雨空は
気付けば太陽 真夏の太陽
海原に あらゆる森に 脳天に あらゆるゴミに
雲の流れ 構わず落ちる
暴力にも似た 千億の日差し

視界はかすみ 揺らいで朦朧
視界は狭まり 盲目寸前
だから忘れるの? 大切なことを
だから忘れるの? やるべきだったことを


ワタシは忘れられることさえ 忘れる
思いつかない言い訳など 最初から忘れる
忘れることも既に過去  そう もうぐったり

でも また 会うわね きっと あなたに


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Last update : 2002/5/3 update by Hiee