路地の愉しみ
気分の赴きに任せあてなき散歩をする。
未だ知らぬ行き先に自らを委ねてみる。
するとふと、異空間に迷い込んだ気分になる。
今までの道すじさえも曖昧になって、
自分がどこにいるのかわからなくなる。
路地に覆い被さり肩寄せ合う家屋が静かに呼吸している。
そこにある何年何十年の記憶が見えない空気の溜まりとして息づいている。
交わされた会話、風に流れる笑い声。
いくつもの繰り返す季節が路地の隙間を走り抜け、
花の香を誘い成長を見つめながら荒廃していく。
誰かにとってはわずかな居場所。
誰に問はずともわずかな居場所。
記憶に宿る、失われた空間。
そのあいだをに身を置くだけで、
失われた遠い記憶のはしに、
幼い頃の自分の姿が見える気がする。